漫画版「皇国の守護者」
2023年に入りふと「そういえば俺は自分が好きな作品やコンテンツを魅力的に紹介できるようになりたいんだった」と思いだした。
ゲームでも漫画でも人に紹介するときなんとなく要領を得ない薄いあらすじを話して「とにかくやってみて(読んでみて)絶対面白いから!」とパッションだけで乗り越えてた自分
今日からできる限り思いつくコンテンツを魅力的に映るように紹介してきたいと思う。
記念すべき第一回の作品は
5巻で打ち切り。コミックスは絶版。それでも尚インターネット上でカルト的人気を誇る漫画「皇国の守護者」について紹介していきたいと思う。
原作:佐藤 大輔
漫画:伊藤 悠
平成16年~18年にかけてウルトラジャンプにて連載されてた同タイトルの小説のコミカライズ作品。
あらすじ
舞台は戦前の日本を模した<皇国>に突如強大な軍事力を持つ<帝国>が軍事侵攻してくるところから始まる。
<帝国>の圧倒的軍事力と<帝国>元帥ユーリア姫の巧みな戦術により<皇国>軍は最初の衝突で敗走してしまう。その殿(しんがり)を任された戦災孤児の新城直衛陸軍中尉。
<皇国>の敗走軍一万二千人の撤退時間を稼ぐために
数百人の部隊を率いて数万人の<帝国>軍との防衛戦を押し付けられるのであった。
まずこの漫画の主人公は1巻~5巻までず~~っと運が悪い。
上官は無能な貴族のボンボンだったり、兵糧攻めにするため食糧庫を破壊しようとした海軍船が嵐で転覆したり、思ったより早く敗走兵が撤退できたのに連絡手段がなく、無駄に長く撤退戦を強いられたり、そして命からがら生還したものの国民に「なぜ潔く死ななかった」と馬糞を投げられる始末……
その中で主人公はあがくあがく
根性の悪さは折り紙付き
裂帛の意志、粉骨砕身、滅私奉公、散り際の美学
このような美辞麗句が称賛される<皇国>の武士道なんのその
徹頭徹尾のリアリスト
正気じゃないこの戦争で上官命令と部下の命どちらも守るそのために
死中に活を求めまくりの大奮闘。
現代の置き換えると理想を語る上司や会社から煙たがられ毎回無謀な案件を振られ、極限状態のためついてくる部下には弱みを見せられない孤独な中間管理職といったところか。
主人公の狂気の描き方がとても秀逸で鉄砲の斉射直前・突撃直前は
毎回唇や奥歯をかみしめ臆病をこらえて笑う描写がある。
その姿に部下は隊長殿の豪胆さを評価するが、本人としては震えをこらえているだけなのだ。状況が悪化するにつれその笑顔は開き直った笑いとなり凄みを増していく
その笑っている隊長と戦争の極限状態で部下も同じように開き直り自嘲的な笑みを浮かべ狂気の軍隊ともいえる集団が完成していく。
後半になると主人公たちはボロ負けしてもう死にそうなのに悲壮感がまったくなく、むしろ地獄を楽しそうにしているように見える。
読者の私にも狂気が感染したのかもしれない。
画像だけ見るととても主人公には見えないよね
戦争の展開や、主人公の奇策等は読んでいて飽きないし
原作が小説なだけあって主人公の臆病で自虐的で緻密な心理描写がストーリーに深く潜らせてくれる。
まるで自分だけが主人公の理解者として戦争に参加しているような感覚になる。
軍記物・戦争物・臆病者が好きですぐ読み終えられる漫画を探している人は「とにかく読んでみて!絶対面白いから!」